Knife/海月
 
巨大と言える訳ではない絵
その一部をナイフで剥ぎ出す
その小さな絵が僕の記憶
半分になっている人の顔は僕かもしれない

満月に向けてナイフを照らす
青白く光り輝く姿を照らす
笑うこと出来なくなる日まで

夕焼けと朝焼けの色
その色を手に滲み込ませ
巨大な絵に擦り付ける
馬鹿げている自分を其処から消し去るために

細い腕にナイフを当てて
その感触は三日月の冷たさ
自分の方に引けば暖かくなる

暖かくなって行く腕
力の入らなくなる手
最後の想いを込めて
絵に手首を擦り付ける

ナイフは床に落ち
深紅に輝き出している

半分なっている人の顔
きっとナイフに映し出された
今の僕の冷笑だったのかもしれない
寧ろ最後の微笑だったのかもしれない

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