街灯と月の関係/美味
 
私が手にしたのは
真赤に熟した果実

二つの嘘

こうこうと
羽虫を誘う灯り
死に近付く熱を放って
いるとも知らず
気づくのは
焼けただれた羽が
もう風を掴むことを忘れた時

悠然と
人を惑わす明り
闇の中に憂いを
映し出す鏡は
いつの時代も
水面に浮かんだ幻を
掴ませようとする

すべてが夢であることを
祈ること

痛みだけがあなたに
近付くための道だった

腐ったような甘い匂いは
小さなこの指を
蜜で満たしてゆく

明日は容赦無く
私を飲み込み

落としてきた果実の
後を追って
昨日に樹を探した

街灯が私を呼び起こす
交尾は何もかもを
誤魔化した
私は不埒な果実に誘われる

近付けば遠ざかる
月のような
影のような
私を騙して
あなたは

痛みを私に残しておいて

生きることを強要する

嘘であれば

忘れることを
祈ることを
月は
赦した
のに

私はもう
止まる力すらない




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