冬の終わりの草笛が/たりぽん(大理 奔)
幼い頃知っていた
時間を巻き戻す
不思議な眠り
思い出せないままの
まっ赤な空がいつまでも続く
夕餉(ゆうげ)の前の過ごし方
秒針も知らず
時計も持たず
生きていけた
あのころ
知りながらじゃなくて
忘れながら大人になる
朝には夜を(はっ、いちばん星だってさ)
夜には朝を(ふん、あさ露もかい)
草笛だって(奇妙な音で吹けたはず)
時計は捨てなくても
いいよ、きっとそれだけは
忘れていくから
知りながらじゃなくて
思い出しながら老いてゆく
ほら、草笛が
草笛が
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