冬の終わりの草笛が/たりぽん(大理 奔)
 
幼い頃知っていた
時間を巻き戻す
不思議な眠り

思い出せないままの
まっ赤な空がいつまでも続く
夕餉(ゆうげ)の前の過ごし方

秒針も知らず
時計も持たず
生きていけた
あのころ

  知りながらじゃなくて
  忘れながら大人になる

  朝には夜を(はっ、いちばん星だってさ)
  夜には朝を(ふん、あさ露もかい)
  草笛だって(奇妙な音で吹けたはず)

時計は捨てなくても
いいよ、きっとそれだけは
忘れていくから

知りながらじゃなくて
思い出しながら老いてゆく


  ほら、草笛が

     草笛が







戻る   Point(7)