幼年期の終わり/キリヱ
欲しかった物がひとつ
縁日で買ったラムネ瓶の中で
からから回るビー玉
何度も取り出そうとしたけれど
出来る筈もなく
ただ瓶を透かし見ては
溜め息一つ
割ってしまえば手に入るのに
何故だかそれは出来ないまま
今はもう
縁日には行かなくなり
あのビー玉を欲しいとは
思わなくなった
買った物がひとつ
青い螢石(フローライト)の丸いピアス
ビー玉に似た丸玉は
あの日のラムネ瓶と同じ色
透かして見た景色が
きらきら光る
炭酸水のように弾ける都会を
歩く私の耳許で
ゆらゆら揺れる懐かしい思い出
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