ゼニゴケ/チアーヌ
ころがきらいだ
そうだそういうところで日光浴でもすればいい
そう思いついて久しぶりに外に出たが
どこもかしこも日陰ばかり
日のあたる巨大なビルは高すぎて
わたしには登れそうもない
勇気を出して行ってみると
エレベーターは一基だけ
番人はずっと笑い続けている
ゼニゴケの生えたわたしは臆病者で
とてもそこへ行き「エレベーターに乗せてください」と
言えない
ああ
登りたいなあ
爪で必死にゼニゴケをぐじゅぐじゅとはがしながら
わたしは裸のままで昼なお暗いビルの谷間にしゃがみ込む
足を大きく開き陰部の奥まで指先を突っ込み
ぐじゅぐじゅぐじゅぐちゅっぐちゅっと音を立てゼニゴケを剥がす
緑色の汁が股間から流れ出しそこにまたゼニゴケが生える
息を吸い
息を吐き
ああなんて嫌なんだろう
ゼニゴケがこんなに嫌なものだということがどうして
最初のときにわからなかったのだろうか
ああ嫌だ
嫌で嫌でしょうがない
股の間から緑色の汁が流れる
途方に暮れてわたしは獣のような唸り声を漏らす
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