およそ、ふたつ分の夜/霜天
 
齧られてしまったキャベツの行方は
前向きに決定されているらしい
後ろはそっちで
前はこっち、と
確認しあうふたりの指先はばらばらで
溶けそうな春先なのに
震える言葉がよく、似合ってしまう


使い古しの言葉ばかりが
やけに透明に通り過ぎていく
夜に
人は裏返って
凹凸のなくなった体で
歩き出そうとする
行き先は、まだ届かないらしい
君も僕も、ふたつ分の夜に裏返って
ただ、座ることしか出来ないでいる


天道虫が飛び立てるように
庭の全てを尖らせてみた
君へ向かう空中が
斜めに、伸びている
上手く飛んでいけるように
羽をひらいた紙飛行機、からは

[次のページ]
戻る   Point(2)