明るい闇の訪れ/いねむり猫
暗いはずのその部屋は
細い光の糸で織られた薄い布で包まれていた
あるいは深い海の底から はるか上方の水面の瞬きに 憧れるように
その部屋で静かに息をしているのは 私の家族たち
その狭い部屋で 静かに寝息を立てている
その静謐さに 部屋は穏やかに闇へと開かれていく
そこには悲しい予感などなく
輝かしい喜びもない
ただその明るい闇に 心と体を休ませている
その静かな いとなみだけがあって
そこに私は一緒に居ても良いのだろうか
神聖で荘厳な異国の祭壇のような
そこに眠っているのは 人間のようでいて もっとやすらかな生き物たちで
私はただ目を開けたまま その明るい闇のまれな訪れを見ている
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