「来る,春,狂う」/do_pi_can
 
あなたの寝息に欲情する夜
疼痛のようなそれを抱えたまま
来る春を想う
開け放した窓のカーテンを揺らし,
夜光虫の群れが舞う
季節外れの風鈴が
時を支配する観覧車の軋みのように
静かに叫ぶ
私は,あなたの胸元をはだけ,
静脈に舌這わせる妄想の中で
生在る物の痛みを覚え,
そのまま,一人,発狂する

来る,春,狂う春
誰が,その種蒔いたやら

皮膚の下に残る
かすかな骨の痛みは
馬鹿騒ぎの末の
かき消された記憶のはてを
教えてくれる
掻き捨てた恥の
上塗り薬のありかを求めて
あなたの肌の上をさすらう時,
ようやく目覚めることができる
わ・た・し という
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