未完の夜/岡部淳太郎
 
は次から次へと灰に姿を変え
終ることのない
始まることを知らない
いのちの響きを
無為のうちに過ごしている

女の項のようななめらかな曲線も
老いた岩のような頑なな角度も
すべてが根を失った草となって
喪の諦めに似た静けさの中で

風に舞っている

夜はちぎれて
そのわずかな断片を
私の手の中に握らせる
この街路のどこかにあるはずの
鳥のねぐらを求めて
未完の眠りの真意を探るように

栄えある名詞を食み
また殺め
葉脈のかすかな綻びでさえも
気に留めながら

風が舞っている

到達することの叶わぬ
いのちの始まりを
目蓋の裏に収めようと
その未完の性質とともに
吹き過ぎている

歌うように また
すすり泣くように



(二〇〇六年三月)
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