Y曲線/恋月 ぴの
 
あなたの姿を まぶたの裏側に
赤い 糸 で繋ぎとめ
下の名前を そっと 呟いてみる


あなたへの 気持ちを 確めたところで


  ぬかるむ春の気配に取り残された針金細工
  忘れたはずの過去のしこりから芽吹く若い
  伸びやかな視界の奥で零れ落ちそうなほど
  紫陽花のああ紫陽花の柔らかな感触を抉る


あなた は あなた でしか無く
わたし は わたし でしか無いのだから
春ニナレバ忘レラレルト思ッテイタノニ


まぶたの裏側 で 蠢き出す あなたの姿
わたし の 視神経を 挫いては
搾り出す 涙雨にも似た 紫陽花の若芽を摘む


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