五月の変形のバラッド/狸亭
 
おれの地獄はいつだって異国の場末
餓鬼どもの中からうまれてくるのさ
地の底をはいまわる畜生の情けの末
涙によごれしらけ顔した修羅のあさ
あまえもおれも人間喜劇の一脇役さ
天上みあげ声を揃えて南無阿弥陀仏

おれの地獄は平凡という今の身の上
時間に追われている餓鬼のメドウサ
畜生と叫んでもわらっている冬の蝿
五月の空の彼方に臭う修羅の死に戦
人間どもの性懲りも無いなまぐささ
狭まる天上まだあるか南無阿弥陀仏

おれの地獄は肥満というシニフィエ
幸福な餓鬼という珍無類の乳母日傘
億萬の畜生から抽出せよビタミンK
酒唄煙草また女ゆらめく修羅の熱砂
神聖人間堕落人間透明
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