メロン/
 
夏風邪の悪化した僕には似あわなかった
安っぽい向日葵の柄のワンピースを着た君にだって似あわなかった
この部屋の築弐拾年という白かったはずの壁にはもっとずっと似あわなかった
どこにおこうか、買ってきた本人の君は迷った
ここが豪奢な病室であったらね
それか僕の病気が結核であったらね
もう少し居場所があったかもしれないが

結局、畳の真中のメロン、君の買ってきた

君がいなくなれば僕だけじゃ食べきれない
このメロンは多分半分はだめになるだろう
君はどこかに帰るのだ
そしたら僕も半分はだめになるに違いない
いてほしいの、と君は聞いた
ここが快適な一戸建であったならね
それか僕がもっと素直であったならね
うなずくこともあったかもしれないが

結果、残される僕、西陽の部屋の

僕とメロンは君にいてほしかったのだよ
たとえばそれは
残された半分よりだめになった半分のほうが
よく知っていることなのだ

切り口のオレンジの果肉を見ていた
切り口のオレンジの果肉も見ていた
水と薬を流し込んで、僕の半分は君を想った

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