冬の音/石畑由紀子
 
寒さは人を侘びしくさせるので
細い雪道ですれ違う時は
どちらからともなく微笑みあって
凍えるのを防ぐ

カタクリの粉を握るように雪を鳴らして
灯りのもとへ帰る人の足どりを子守唄に

産まれる前へと戻っていった地中の卵たち
緑の日々を反芻しながら
白い寝息をたてている

呼吸がピタリ重なった時
人もまた
深く
深く



眠る それぞれの夜は
いずれ溶けることを知っているから
町はためらいもせず
寝息で埋まってゆく



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