ラブレター/霜天
像
もつかない、遥かな国から高いところを通っ
て、また足跡を叩く。漏れ出した言葉が、子
供の頃の落書きの申し訳なさで、薄く張り付
いていく。完璧な、そう呼べる何かを持てる
はずもなくて。月の雨の降る夜に謝り方を忘
れて、いつも慰められている。
そしていつかつぶやいたこと。
いつだって簡単なはずで。何かにつけてひと
りぼっち。まだ遠くへ行く時間じゃない。イ
チから始まってゼロに戻る。前からの順番を
ひとつずつ数える。そこはきっと数分の可能
性だ。そこにいること、そのままでよかった
はずの。存在する足跡が確かに今を向いてい
ること。足元を固めて、そしてその日も優し
い、そう思える心を。ハレルヤ、よく意味も
分からずに、落ちていく光が。
まだ残っているだろうか。
存在証明を同封して、
消えずにいてくれたなら。
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