ラブレター/霜天
忘れることも出来ないだろうけど。
歩いていく爪先に、力をこめて息を送る、つ
まりはそれだけのこと。歩き続けるのが世界
で、歌を引き伸ばして道にしてみたい。今日
も一日が優しい、そんな今日でよかったと思
えるその感情が優しい。いつでもその場所に
いて、暮れていった。白いテーブルと白い椅
子を日常の中に持ち込んで、円いドーナツか
ら覗いて世界は。甘い匂いになれるどこまで
も、素敵なことだ、と。
何かが始まるようにしてその日は。
雨音が続く夕暮れに、それを雨と呼んでいい
のかを迷って。立ち往生する後姿が。雨粒の
その隙間に迷って、息を詰める眠りが。想像
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