真実の鏡/落合朱美
 
こかに捨ててくれればよいものを 
女神はいきなり私の口をこじあけて
あろうことかまた私の腹の中に戻してしまった
ぬめぬめとした黒い塊の生臭いこと
私はうぐうぐと声にならない叫びを上げて

目が覚めた

重苦しい頭とこみあげる吐き気と闘いながら
辛うじて私は起き上がり おそるおそる鏡を覗く 
蒼ざめてはいるけれどいつもの私の顔に安堵する
食欲もわかないままにのろのろと支度をして
いつもの通勤道路を歩き始めた

・・・・と、人々の視線を感じる
なぜ、みんな私を見ているんだろう
くすくすと忍び笑いさえ聞こえるような視線に
昨夜の出来事を思い出しながら怯える
俯いて、で
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