ブランシュの丘/望月 ゆき
 
ねえ、ブランシュ、
あのとき
あなたが越えようとしていたものがなんだったか
今のわたしにはもう
それを知る手だてもないけれど
あなたはいつも わたしの
理解の範疇をこえて
日常のただしさから
逃げているようなひとだった



窓わくを青に塗ったのは
空とひと続きになりたい、と
あなたが言って
わたしが笑った あの
朝八時の景色を
ずっと再生しつづけたかったから
遠くの丘の上に見えた 白い校舎と
そこからかすかに届く
チャイムの音だけが
この部屋から消えてしまった
あなたより、すこしおくれて



何万回も夢をみて
何万回も泣いたけど
そのたび
[次のページ]
戻る   Point(24)