「ばあちゃんの不思議なラーメン」/do_pi_can
 

ばあちゃんは、今年七十五歳だ。十人ばかしの小さな老人ホームに住んでいる。亭主の残したラーメン屋を売って、ここに移ってきた。ばあちゃんは、天涯孤独だ。亭主は、十数年前に、息子は、それよりももっと前に、亡くなっている。

亭主は、七十歳で死んだが、死ぬまでラーメン屋だった。脳溢血で倒れたときも「ラーメンがのびちまうじゃねぇか。」と言いながら倒れたし、臨終の時も、ばあちゃんに「湯は沸いてるか。客が腹空かせて、待ってるぞ。」と虫の息ながらに言ったのが最後だった。それから十年、死んだ亭主に世話になったという源さんに手伝ってもらいながら何とかラーメン屋を続けたが、源さんの故郷の母親が倒れたとかで、奥さ
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