九鬼周造著『日本詩の押韻』再読/狸亭
 
世紀にかけてアフリカに住んだ教父テルトリアヌスが既に押韻 の端緒を開いてゐると見る人もある。要するにラテン文学に存してゐ た押韻の可能性がアラビア文学の外的刺激によつて完全な発達をする 機会を得たのである。さうしてシリア或ひはアフリカからローマへ移 された押韻法はアムプロジウスおよびアウグスチヌスの採用するとこ ろとなつて教会音楽と共に発達し、八世紀に至って一般化された。  (中略)要するに押韻法は東洋に発達したもので、西洋では、先ずラ テン系の文学がそれを継承して更にチュウトンおよびアングロサクソ ンの文学に伝へたのである。それ故に、西洋の押韻はいづれの場合に あつても、自国語のうちに存する可能
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