九鬼周造著『日本詩の押韻』再読/狸亭
イタリーに起こった。一対の四 句すなはち前聯八句と、一対の三句すなはち後聯六句とから成り立つ 定音詩であるが、句の総数に基いて「十四行詩」といふ名の下に総括 されることもある。しかしソネットといふ名称はイタリー語のsonore (鳴る)から来てゐるもので、il sonettoは「鳴詩」または「響詩」 の意である。その特色はむしろ韻の形態に存するので、単に行数にあ るのではない。韻が美しく「鳴る」ことを本質としてゐる。ソネット の原型にあっては前聯すなはち一対の四句は同一の韻による抱擁韻で なければならない。後聯すなはち一対の三句は適宜に押韻することが 許されてゐる。“ソネットの形態はすなはち左(本
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