九鬼周造著『日本詩の押韻』再読/狸亭
 
はじめに

 詩人であり『中庭』の熱心な読者でもあるS氏から寄せられた文章を読みました。日本語による押韻定型詩の可能性にたいする根本的な疑問が述べられており、まことに古くて新しいこの命題は常に論じつづけられるべきなのでしょうが、一方では『中庭』創刊以来くりかえし論じられて来てすでに何度も誌上に掲載された論考を読みおとされているようにも感じられます。そこでこの際もう一度S氏や『中庭』の新しい読者と一緒に九鬼周造の名著を読みたいと思います。

 九鬼周造(1888〜1941)は名著『「いき」の構造』で知られております。(哲学者。東京生まれ。東大卒。京大教授実存哲学の立場から、文芸の哲学的解明に
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