キッチン(拡張中)/霜天
と突然言われた
ともかく、晩御飯を作って食べさせると
おいしい、と言ってくれた
あれは結局誰なんだろう、一晩経っても
*
ちょっとそれをとって、と
包丁で指し示すと
解凍されなかった魚から
血が流れていた
間違ったことは、するもんじゃない
*
今日は私が作るからと、あの人が台所に向かう
ふたりはなんとなくそこにいる
冷蔵庫を開けると、空がごろごろと落ちてくる
その日のロールキャベツには
キャベツがどこまでも詰まっていた
*
昨日割ってしまった皿を片付けていると
君の手が包帯まみれなのに気付く
街中から包帯が消えた日
動けない指を見ながら
割れた皿を繋ぎ合わせている
*
完成した台所には
いろんなものが集まってきた
誰もが狭い椅子に座って
明日のことばかりを話している
冷蔵庫からは、まだあの日の空が
ごろごろと音を立てて零れている
世界は、ここから動いているような気がして
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