冬の庭にて?印象/前田ふむふむ
 
滴る水滴の先が、凍りつく地面のひだを叩く冬。――
冬のうずきは、過去を染める季節の色を、林立する寂しさで押し流すが、朝の庭では、気高いさつきの花が、薄いひかりのぬくもりを花弁に焼き付けている。
    
38・5℃の体温計が畳の上に無造作にころがり、
渇いた熱が私の喉の奥を締めつける。加湿器の蒸気が乾燥した部屋をうるおしている。硝子戸越しの縁がわから見える名もなきいのちがひとつ――、
    
死者の記憶がまぶしい鴉がとまる家の、あつい皮膚で梱包された巨樹の精は、弓のような顔を静かに持ちあげる。その枝に危なげに支えられている季節はずれのアゲハ蝶が、痩せた肉体を灰色の風にさしだしては、お
[次のページ]
戻る   Point(3)