冷蔵庫の扉に貼ってあったメモ/佐々宝砂
 
切り刻め
春を
芽吹きを
生え初めたばかりのあわい下草を

切り裂け
よく研いだ鉈で
大地を
老いぼれた大樹を
枯れながらまだ生にしがみつく老骨を

一刀両断されたきみの住まいに
石英の霰ふる日まで
きみは
切り続けなきゃならない

きみは最後のヒトなのだから
最後まで暴虐を尽くせ
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