板を登る男/松本 卓也
 
指を掛ける場所といえば
この妙に荒い木目くらい
引っ掻いては滑り
滑っては引っ掻き

繰り返すうちにやがて
登れるのだろうかなど
それは無意味な自問

冷静に見てみれば
立て掛けられたのは
身の丈程しかない

だけどなぜ
登ろうとする?

些細な問題を
人生の一大事のように
取り扱う癖がきっと

板を引っ掻く
爪がはがれ
板を滑り
這いつくばり

取り除けばいいのに
飛び越せばいいのに

きっとそうやって
足掻いてる僕が好きなんだ
戻る   Point(1)