板を登る男/
松本 卓也
指を掛ける場所といえば
この妙に荒い木目くらい
引っ掻いては滑り
滑っては引っ掻き
繰り返すうちにやがて
登れるのだろうかなど
それは無意味な自問
冷静に見てみれば
立て掛けられたのは
身の丈程しかない
だけどなぜ
登ろうとする?
些細な問題を
人生の一大事のように
取り扱う癖がきっと
板を引っ掻く
爪がはがれ
板を滑り
這いつくばり
取り除けばいいのに
飛び越せばいいのに
きっとそうやって
足掻いてる僕が好きなんだ
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