ヒビワレ/よーかん
た。
「笑ってすごせばいいんだよ。
楽しければそれでいいんだよ。」
中学生は笑顔をつくってそう言った。
笑顔は造ったものだった。
ボクにはそれがよくわかった。
瞳が全然ゆるんでいない。
劣等感と不安が顔に滲んでいた。
中学生が足を踏み出す。
バリバリと氷が割れる。
ボクの模様が無残に消える。
「楽しければいいんだよ。
笑って過ごせばいいんだよ。」
中学生がバリバリと足を踏み出す。
円を描く。
醜く尖ったひび割れが水溜りに広がりつづける。
やめろやめろとおもいながら、
ただつったっていた。
やめてくれやめてくれとおもいながら、
ボクはつったっていた。
「そうだね、たのしければいいんだね。
そうだね、笑ってすごせばいいんだね。」
氷の下の気泡に謝れないのが悔しかった。
やめてくれ、やめてくれ、
オマエなんて消えてくれ。
ボクがそう祈りつづけている。
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