途切れ目 に/塔野夏子
 
夜が来る
月があってもなくても
私は鳴く
誰にも聞こえない声で
私にも聞こえない声で

私という存在の途切れ目 に
夜ごと咲く花があるからだ
けれど私はその花に
触れることはおろか
それを目にすることすら出来はしない
それは途切れ目 にあるからだ

ただその花が咲き
途切れ目 を吹き抜ける風に
花びらが震える気配だけを感じ

私は鳴く
誰にも聞こえない声で
私にも聞こえない声で

途切れ目 にあるゆえに
決して実を結ばないその花を想って



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