冬の動物園??デッサン/前田ふむふむ
ビを消すと、黒い画面に映るやつれた顔から動物の弱々しい呻き声を発していることに気付く。それが自分であることに気付く。ある時、孤独な時間に、自分の断片をみて、自分が何者であるかを気付くことがあるのだ。親しんだ都会の片隅を、帰宅を急ぐひとたちの中で、動物の呻き声を聞いて、愕然とするひとがいるだろう。だが、思考を甘受させてくれる余裕を与えずに人間社会は、急ぎ足で進んでゆくのである。そして、すぐに忘れ去り、神々の王国の時間を過ごすのである。いつか、ふたたび、一人孤独の部屋で、怪しげに去勢された動物に変身して、自分の声に恐怖を覚えるまで。
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