冬の動物園??デッサン/前田ふむふむ
 
真冬の動物園をゆくと、不思議な光景に遭遇する。
例えば、インド象が、真剣に雪を、おいしそうに競って食べているのである。彼は、はたして象なのだろうか。生きている象は、熱帯のサバンナの赤い夕陽を背に咆哮しているだろう。ならば、如何なる生き物なのだろうか。例えば、豹たちは冬の光の中で、夜行性の老人になり、便を垂れ流しにして恍惚としている。すでに、体内で得体の知れない液体が発酵しているのか。あれでは、中身が腐っている剥製だ。彼ら動物たちは、餌を自ら獲得する先鋭な野生はすでに無く、弱々しい呻き声をあげて、決められた時間に病院食のように餌を与えられる廃人のようだ。それは同時に、古代の奴婢以上に厳しく管理され
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