所属という名のもとに/−波眠−
財布は此処に置いていく
膨らみのぶんだけ誇示された
インクが遺失物と化すには
何年のときが必要なのだろう
ただ手を置けばいいさ
懐かしい胸を抱きしめることはできなかろうが
憎々しい頬を殴ることもないだろう
足も残していけばいいさ
会いたいときに会いにいくことはできなくても
会いたくないひとに会うあの後味の悪さはもうない
口も例に漏れずさ
余計な一言を悔やむこともない代わりに
もう一度笑顔にさせることもできない
こんなの自分じゃない!!
叫ぶことも放棄した瞳だけが
ぎろぎろと床に回転するのをイメージして
そこまでしてでも
財布は此処に置いていく
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