冷めた水?(1986.12・30)/木立 悟
のほうに「なるほど、なるほど」と思ってしまうのだ。
いつも願っている。「理性のけもの」に喰い殺されて死にたいと。だが一生かかってもできるかどうかわからない。のぞみの生も死も得られぬまま、いつか咳の数を数えながら死ぬのだろうか。「なるほど、なるほど」と思いながら死んでいくのだろうか。
遠い遠い。ひとりひとり。
静かな空疎に至ってはじめて、胎みの音を聴くことができる。血管のシンメトリー。骨のメカニズム。眼球のパラドクス。さざめきは刃を手にして指揮者を拒み、布人間のたたずみを見守るばかり。朝焼けにミミズクはカタカナで鳴き、笑顔のカラスを満腹させた。足の無い鉄塔が小さく輪を描き、見えない月に向かって許しを請う。私を超えた私が微笑み、私のようで私でないもの、私のままの私とともに、湿原の冬を祝おうとする。
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