[ 天使と僕(よりみち)]/渕崎。
 
何がやりたい、とか。
何になりたい、とか。
そういうものがないのだ。
そういうと、自称天使は少し哀しそうな顔をして、『つまらないですね』と口を尖らせぐるりと宙で一回転した。
つまらない、と思う。
つまらない、だろう。
つまらない、つまらない、つまらない、
でも、やりたいことなどみつからない。

『では、寄り道をしてみてはどうですか?』

唐突に、自称天使が言い出した。
勉強道具を片付けながら、はぁ?と怪訝な返事を返した僕に天使はにっこり笑って『そうすればいいのです』と一人納得している。
当事者を差し置いて。
寄り道、ねぇ?
その寄り道の仕方すらわからない僕はどうすればいいのだろうか。
珍しく僕は悩んでいる。
悩んでいる僕をみつめて、天使は嬉しそうに笑っている。
なんで笑うんだよ、ときつめに問い詰めれば貴方が今まさに寄り道をしているからですと返された。


『寄り道をしたぶん、人は豊かになるのですよ』

だから、存分にお悩みなさいと天使は言った。
[グループ]
戻る   Point(0)