乱丁だらけの古本屋/蒸発王
いつと本屋に行ったんです
何でも初めての詩集が出たとかで
それを買うために
初版も少なかったから
街で一番大きな本屋にね
まるで思念の森のようでしたよ
幾億もの文字が空想が
本という箱庭に封じられていた
整然と配された空間なのに
何故か
文字列の隙間から零れた
無機の激情が
胞子のように浮遊している
生々しい思念の匂いがする
森
その真中に立っていると
それだけでもう
酔っ払ってしまいそうで
気がつくとあいつとはぐれていました
やっとあいつを見つけた時に
あてられて
しまったのでしょうね
遠目でしたけど確かにね
あいつは
[次のページ]
戻る 編 削 Point(4)