乱丁だらけの古本屋/蒸発王
 
いつと本屋に行ったんです
何でも初めての詩集が出たとかで
それを買うために
初版も少なかったから
街で一番大きな本屋にね

まるで思念の森のようでしたよ
幾億もの文字が空想が
本という箱庭に封じられていた
整然と配された空間なのに
何故か
文字列の隙間から零れた
無機の激情が
胞子のように浮遊している
生々しい思念の匂いがする


その真中に立っていると
それだけでもう
酔っ払ってしまいそうで
気がつくとあいつとはぐれていました


やっとあいつを見つけた時に



あてられて
しまったのでしょうね

遠目でしたけど確かにね
あいつは
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