朝/前田ふむふむ
 

青い朝が鈴を鳴らして合図する。
霧のむこうは、へらさぎが、雨音に耳を澄まして、
零を数え終えると、夥しい空の種が芽を出して、
幾万のひかりが降る。季節が連れて来る慈悲を、
寝台に凭れて、味わっている、盲目の母親の手に、
透明な音符が長い糸を垂らして、
編物に織り込まれるのを待っている。
絡まる世界の末端まで、おしの子供たちは、待ちきれずに、
糸を切り、寒い朝が嫉妬している、
ひかりの粒子で形成する熱帯植物の篭の鍵を開けて、
黒い花々の蜜を絡めて、飲み込み、声を取り戻す。
子供たちが朝の精気をやさしい歌声で撫ぜると、
盲目の母親の眼は開かれる。
    季節は赤い抑鬱を
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