三人の少年/麻草郁
 
たが、いったい自分が何の為に歩いていたのかはすっかり忘れてしまっていた。 

三人目の少年は、走り出してしばらくすると目の前の輝きがなくなっている事に気付いた。
「近づくと、なくなってしまうのかなあ」
横を向くと、遠くの方に更なる輝きが見えた。
「あ、あそこにあったんだ」
少年は、もう村に帰る事など考えてはいなかった。輝きを追いかけて走っていると、楽しかった。
しばらく走っていると、自分の後ろを走っている他の村の少年の姿に気付いた。
「どうして走っているんですか」と少年が聞くと
「君が楽しそうに走っていたから」と他の村の少年は答えた
そうやって、少年のまわりを走る者は、だんだんと増えていった。
中には、少年に走りのフォームを教えようとする者や、少年を転ばせようとする者もいた。
それでも少年は気にせずに走った、耀きにはいつまでたっても辿り着かなかったけれど、楽しかった。
やがて少年は走り疲れて死んだ。
最後まで、自分が他の者にとっての輝きになっていた事には、気付かなかった。

おしまい
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