家族/tkstkmt
禍々しきものの陳列された
地下室の展覧会で
私は魅せられながら
それでいて
不安に震えて過ごしていた
と、階段を昇り窓の外には
緑のなだらかな起伏が広がる
妻と二人の娘が手を振っている
それでもこんな私を待っているのだ
私は安堵して、妻子の元へ駆け寄った
「お父さん、お父さん、行こう」
上の娘に手を引かれ歩を進めると
駆けだした下の娘が転んで
ちょっとした段差を落ちて行った
「だいじょうぶか、あの子は」
妻も上の娘も笑っている
相当痛いはずの下の娘も笑っている
「だいじょうぶかい、ほんとに」
私も笑うしかない
「だいじょうぶかい、あの子は、ほんとに」
私はなぜだか涙があふれて
そのときやっと
かけがえのないものを失いつつあるとさとるのだ
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