どこかへ/草風
 
緩やかな坂道に差す木漏れ日が

少し春めいた感じを届けたかと思ったら

また今日は、その坂道を駆け上がるように

北風が口笛を吹いていった。

これから夜半にかけてまた、

冷たく重い雨が坂道を静かに流れていくようだ。

時は雨のように際限無く皆の上に降り注ぎ、

幾重にも重なって

無数の思いや空間を生出しては、

無用のものたちを流していく。

北風が吹き寄せた無用のものたちを、

雨がまたどこかに流していく。

遠い記憶の彼方にある、「どこか」へ・・・
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