夜と響き/木立 悟
すぎる光が
雪を揺らす
返らぬ応え
進みゆく火
安らぎに失われる言葉があり
ひとりの歩みに降りてくる
青く尾をひく虹彩の
重なる軌跡に降りてくる
赤い布に金の糸
通りは筒のよにふるえ
凍えた生きものがあたたまるころ
どこからか来る鈴と笛の音
足跡は凍り
足跡は溶け
足跡は茂り
足跡は飛ぶ
足跡を残し
足跡は飛ぶ
架空のかたちを奏でては
水は筒を流れゆく
うたはほどけ
うたはほどけ
雪のはざまに渦を描き
響きは手のひらのつぼみを灯す
つぼみのままに
つぼみのままに淡く触れる
つもることのできない声の
ひとつひとつに応えながら
背(せな)は緑
息は金
ふりかえることのないひとりのまぶしさ
原のなかを遠去かる
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