慰安の雨/松本 卓也
軒先から滴る雫を
広げた掌に溜めてみて
人影疎らな路上に向けて
高く放り上げてみた
生きる事はつまり
意味を削る事だと
納得したフリをして
今日も繰り返した自問
とうに出た答えを振り返る
肩には小雨の痕が残り
昨日よりまた重くなる
意味を問い返す度
見上げた空を覆うのは
雨なのだろうか
涙なのだろうか
前髪に触れた惑い風
散らした雫は街灯を浴びて
一瞬だけ生んだプリズム
映すのは明日に在る姿
それは皮肉に満ちた心を
少しだけ安らかにして
きっと変わらない日常に
慰めの歌を奏でながら
生き残る今日を謳うのだ
戻る 編 削 Point(3)