ひとりのとり/
木立 悟
小さな背に
ひしめく羽
いつできたのかわからない傷を
いぶかしげに見つめながら
腕から生まれる世界を放つ
狭い呼吸にせかされるように
傷つき倒れることも知らずに
けして自ら輝かない
鏡をまとった姫のように
まだらな夜の木の陰から
月の行方を追いつづけている
春が終わり
一瞬の紫が
夜の庭に笑む
別の空の鳥が
光の波打ち際に降り立ち
巨大な掘削船の向こうに広がる
打ち捨てられた永遠を見ている
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