HALLUCINATION ?/KADY
につながれ
目隠しをされ
鼓動よりも遅い時を刻む音を数える
その時を待っている
彼は血液を失い
自我を失い
スベテを失った
黄色い目のご主人様の命令だけを求めている
時が来て
役立てる事を望んでいる
黒い毛並みの黄色い目の悪魔が耳元で囁く
今だ・・・
ゴミの山に寝そべる彼の肉体は
自由を失い
見上げる空の碧さの中に
熔けてゆくような感覚に包まれていた
彼の前を行過ぎる人間達の冷ややかな視線が
彼の神経を刺激させられないでいる
歯車から欠落した彼への罵倒は音にはならない
それぞれの完璧に密封された心の中にこだまするだけだ
彼は思う
欠落しているのは
お前達だ・・・
その時
通りの向かいで
黄色い目をした野良猫が
「ニャァ」
と鳴いた・・・
[2005年09月14日(水)]
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