正時の鐘(緑の日々・2)/石畑由紀子
 
 
長い針がてっぺんで止まって
からくり人形が踊りだすように
季節は正時を知らせないので
私には夏と秋の境目が分からない
午後いつものように並木道を通ると
すっかり中年になった白樺の深緑
「緑の日々」を書いた時の五月のきみは
あんなにも色若くて無邪気だったのに
今では理不尽な世の中を憂うように
しかしさして抵抗もせず風に吹かれている
忙しさにかまけて軽い挨拶ばかりだった私は
久し振りにきみの下に腰かけ
大人同士でゆっくり話がしたくなった
今朝の新聞を見たかい?
年金給付が25年度から67歳からに引き上げられるって
このまま日本はどうなってしまうんでしょうねぇ
これ
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