「再生」(novel)/とうどうせいら
 
、男は指先で遊んで。
「俺は今幸せならそれでいいわけだし」
 男は低い声で笑って、手を取るとベンチから女を立たせた。
 帰り道、二人は手をつないで歩いた。
「来世は恋の病で死にたくないな」
「私こそ、今度は死刑台になんて上がりたくないわよ」

 二人は笑って、それから女は、男の横顔を盗み見た。こうして二人でいるだけで、胸が不思議と温かかった。
 お互い、何と言えばいいか分からなかった。でも多分それが、愛しさというものだった。


* つないだ手の内側で、二人は三百年前の記憶を憶えていた。











                             Fin.



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