乾いた耳/A道化
また一日分
夜で翳り
透き通ることなどあり得ぬコンクリートだ
壁と床、その接点の無人に紛れればわたし
隠さなくとも隠れるのだった
耳の奥の
疼きの蝙蝠の(、っ、っ、っ、っ、)は
促音のし過ぎで、言葉になれず
音にもなれず
嗚呼、
誰の呼吸も注がれぬ
例えば、雨宿りのSCENE、という手段で、
簡単に肌と肌を貼り合わせる熱帯雨のようには、
誰の呼吸も注がれぬ
例えばあなたから、(例えばわたしへ、)
この上なく直接的な、この上なく集中的な、
熱帯雨のようには、例えば、呼吸は、
注がれぬ、どうしたって
夜の、冬の
どうしたってコンクリートなのだから
日々、日々、日々、
夜で翳り
透き通ることなどあり得ぬコンクリートの
壁と床その接点の無人に紛れ耳の奥のわたしは
隠さなくとも、ほら、隠れ
誰の呼吸も注がれぬよ、嗚呼、決して
何も注がれぬのだよ
2006.2.26.
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