サボテン哲学/tkstkmt
小さくてかわいそうな君の窓を
容赦なく風が鳴らす
びくつくな
真っ暗な窓に映った君の部屋には
君でないひとの姿があったのか
君は昼すれ違った人々の
幾百の息の匂いに包まれるような
寝苦しいひと夜を眠るこしらえをする
夢は
またあの例の砂漠の真ん中で待つ
サボテンの夢かい?
サボテンとつがうには君は柔らかすぎるだろう
そのトゲは思いのほか辛辣に君の肌を蹂躙するだろう
でも知ってるだろう、その皮の下には
あの青い舌のトカゲも好物のみずみずしい果肉があるのだ
君がそれに届くと思うのか?
ああこの砂漠は世界とは縁が切れている
太陽は南中し、風もやんだ
サボテンの立つところに人々はあこがれの矢を放つ
しかしサボテンは影も落とさない
砂一粒一粒のため息に耳を傾けているのだ
非常にドライな孤独
「ドライな孤独」と口に出して
君はその身の不浄を嘆く
サボテン
ことばもなく哲学を紡ぐ
苦行を避けた小さな君は
湿っぽい布団の中に丸まって
行けもしない、消えもしない
あの電灯のしみったれた常夜灯こそが
君の太陽
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