[ 天使と僕(あまおと)]/渕崎。
『雨音はね、歌なのですよ』
今日も朝から雨だった。
ブラウン管の向こう側で、
似合わないスーツを着た気象予報士が、
梅雨前線の停滞がどうのこうの言っている。
暦は太陽暦で6月の終わり。
要するに日本列島の季節は現在「梅雨」の真っ只中というわけだ。
僕は朝食の覚めたトーストを齧りながら、
パシパシと窓を叩いては滑り落ちていく雨を見る。
雨の日はどうも好きになれない。
別に晴れた日が好きだというわけでもないが、
雨の日に比べればずいぶんといい。
不機嫌な顔で僕が窓の外を睨んでいると、
意味もなく宙にぷかりぷかりと浮きながら、
魚のごとく揺らいでいた女が指
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