見 者/塔野夏子
淡い太陽が
黒い淵にゆっくりと沈みゆく
街は刻一刻記号へと分解されながら
地平の方へ徒歩の速度で遠ざかる
立ち尽くしていると
不意に頭上から降りしきるのは
清らかな絶望
清らかな絶望
清らかな絶望
清らかだから絶望 なのか
淡い太陽を呑み込んだ黒い淵の水面が
音もなく重たくゆらめく
遠ざかりゆく街はでも地平に辿り着くより前に
すっかり分解されてしまったようだ
生ぬるい風が思いだしたようにやって来て
また去ってゆく
ここに立ち尽くしているのは何故 なのか
いつしか
清らかな絶望の降りやんだ色のない天を見あげると
額縁に入った絵が幾枚も
雲のように西から東へと流れてゆく
すべて同じ絵のようでもあるし
違う絵のようでもある
だんだんと暗くなって
よく見えなくなってきた
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