ハードボイルドエッグ2&シャワー1/カンチェルスキス
射鏡が
沈黙したまま
暗闇を映し込んでいた
履きつぶしたプーマは
歩くたびに踵が擦れて
キュッキュッという音を響かせた
この世には自分しかいなくなったような気がした
眠り静まった民家の屋根の向こうで
ファミレスの黄色が
規則的に回転していた
おれに必要なのは
新しい靴に履き替えることかもしれなかった
でもそれよりおれが考えたのは
部屋に戻ってから食べる
固めのゆで卵2個と
頭から浴びる
熱いシャワーのことだった。
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