煙突のある風景/桜 葉一
僕の住む街のちょうど中心に大きな大きな煙突がある。
それは地中から突き出ていて、いつも白い煙をモクモクと吐き出している。
天気の良い日は、影が街を覆って街全体が日時計になっているかのようだ。
煙突には昇ることができる。
エレベーターがついていて、煙を排出しない時間帯だけ動いているのだ。
最近では観光名所にもなっている。
その煙突がなんの為にあるのかは、実は誰も知らない。
大人も子供も、街の人も、街以外の人も誰も知らない。
煙突の中で働いている人も、なにも知らないという。ただ黙々と働いているだけ。
煙突に昇ると、街全体を見渡すことができる。
すごい高くて、車なんて豆粒
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